それは8月も終わりに近づいた暑い日のこと・・・。
ある日の夕方、自室の居るとカサカサという音が聞こえるのに気が付きました。常に聞こえるのではなく、音がしたらしばらくは鳴り止む感じです。
最初はゴキブリかなと思って音が聞こえてきた辺りを調べてみましたが、壁際に紙袋があるだけ。紙袋の中を覗いても本が数冊入っているだけ。周囲を見渡しても何も見つからず。ひょっとして壁の中かも知れません。ゴソゴソしていたら音は完全に鳴り止み、調べるのを中断しました。
風呂に入り、夕飯を食べたらすっかり音の事は忘れて、いつも通り就寝します。すると夜中にふと見が覚めました。夕方に音が聞こえてきた辺りで例のカサカサ音がスケールアップしたのたのか、今度は少し大きな音でカリカリと何かをかじるような怪しい音がします。
夕方調べた時には何も居なかったので壁の中にネズミかイタチが入り込んだのか、面倒なことになったなと思いつつ眠いのでそのまま放置。
夜明け前、また目が覚めました。まだカリカリと音がしています。耳障りなので音がする辺りの壁をドンと叩くと静かになりました。これでゆっくり眠れます。
いつもどおり、7時前に起床しましたが夜中に二度も目が覚めたのですっきりしない目覚め。しかも、まだあのカリカリ音が聞こえます。音の正体を確認するために壁際の紙袋に近づくと袋の内側に何かへばりついています。
よく見ると一匹のハナムグリらしき虫がへばりつき、袋の口へ向かって内側をよじ登っている途中と思われます。ただ、紙袋の表面が滑るのか、その場から動けず、一つの足を引っかかりを探すように前後させています。そして、それに合わせてカリカリという音が・・・。
怪しい音の正体は紙袋トラップに引っかかったハナムグリでした。最初見た時は底に居たのか、本が数冊入っていたのでその陰に隠れてしまい、見落としたのでしょう。おそらくカサカサ音は底を徘徊する音で、夜中に袋の口付近まで登ったものの、足場が無くなり、カリカリと探していたのでしょう。しかし、ハナムグリは羽根で飛べるのになぜ飛ばなかったのか不思議です。羽根に対して体が大きいので高いところからしか飛べないのでしょうか。
ハナムグリをそっと掴むと、一晩中カリカリやっていたので疲れているのか抵抗もせず大人しく指にしがみついています。そのまま庭に連れて行き、草が茂っている所に放しておきました。そして夕方に放した所へ見に行くと、すでにハナムグリの姿は無く、どこかに去ったようです。